マモル
ノリコ
-
何これ?
日本史の教科書じゃない?
マモル
-
そうだよ、高校用の日本史の教科書。
やっぱり、歴史教科書と言えば、この山川出版社だな。
ここのところ、アイコにやられっぱなしだから、ちょっと勉強してみようかと思って、会社の帰りに買ってきたんだ。
ノリコ
- まあ~、ご熱心なこと。
マモル
- 教科書取次店ってところで買って、帰りの電車の中で読んだけど、これが結構面白いんだよ。
アイコ
- あつ、パパ、お帰りなさい。
マモル
-
ああ、ただいま。
ところで、アイコ、聖徳太子って知ってるか?。
アイコ
-
パパ、何言ってるの?
知ってるわよ、当然じゃない。
マモル
-
しかしな、お前が高校に行って、日本史を習うとするだろう。
聖徳太子の話題なんか、ほんの一瞬で通り過ぎてしまうだろうよ。
テストにはもう間違いなく、出ないね。
アイコ
マモル
-
ほら、この高校の教科書には聖徳太子の写真が載っていない。
見出しに「聖徳太子」の文字どころか、「厩戸王(聖徳太子)」って、括弧付きで書いてあるんだよ。
そして、冠位十二階や憲法十七条(十七条の憲法)、遣隋使の派遣が聖徳太子の実績ではなく、推古天皇の実績のように書いてある。
そう言えば、「摂政」という言葉も出て来ないなあ。
ノリコ
-
アイコの教科書、ちょっと見せて。
ここに書いてある聖徳太子についての記述は、私達が習った時の内容とほとんど変わってないわ。
思っていたほどは、変わってないみたいね。
けど、この肖像画、別人だったのかしら?
それと、脚注にある、600年の遣隋使というのは初めて知ったわ。
マモル
-
まず、肖像画の件は、聖徳太子の死後100年以上経って描かれたものらしい。
写真とかない時代に、100年以上前の人の顔を正確に描くのは難しいだろうって。
それと、この絵のモデルが聖徳太子という証拠がないんだ
手に笏(しゃく)を持つようになったのは、彼の時代からずいぶん後らしい。
アイコ
- じゃあ、この括弧付きの名前になったのは何故?
マモル
-
これは、彼が生きている当時は「聖徳太子」ではなく、「厩戸王(うまやとおう)」だったんだ。
「聖徳太子」というのは、彼の死後8世紀頃に付けられた諡(おくりな)らしいね。
だから、今後は中学校の教科書でも「厩戸王(聖徳太子)」って書かれるんじゃないかな?!
ノリコ
- 「摂政」の記載が消えたのは何故かしら?
マモル
-
この辺は結構揺れているみたいで、「皇子」と言ったり、「王」と言ったり。
その時期に、その呼び名があったのか、後から付けられたのかの判断だと思うよ。
この教科書の著者が「摂政」という呼び名がまだなかったと判断したのかもね。
アイコ
-
へ~、パパもそこまで詳しくなれるほど、高校の教科書って凄いんだ。
私にちょっと貸して。
マモル
-
おいおい、ちょっと待ってくれよ。
まだ最初のところしか読んでないんだぞ。
ノリコ
-
アイコ、歴史の勉強も良いけど。
他の科目も頑張らないと、もう受験生ですからね。
アイコ
- は~~い。
Loading ...
登場人物の設定に関しては【こちら】